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私は医学部卒業後、医者をやっていましたから「患者さんが治る」という様子を日々目の当たりにして喜びを感じていました。しかし、もう一歩踏み込んで考えてみると、診療するよりも薬を創ることの方が、患者さんへの影響が大きいのでは、と思うようになったのです。
その後、大学で教鞭をとりながら研究を進め、すでに市販されている2つの薬を創ることにかかわりました。それぞれ違う製薬会社に協力するかたちでできたものですが、やはり自分の会社で良い薬を創りたい、という想いから1999年にバイオベンチャーとして起業しました。
創薬には専門の異なる複数の人達の協力が欠かせません。そこで、新薬を発明するという夢を共有出来る研究者達と、その研究者や研究体制を支えてくれるマネージメント部門の人達が必要になります。私は北は北海道から南は九州まで、私の気持ちに同意してくれる人達を探すために歳月を費やしました。その結果、新薬を作りたいという強い思いに同感して下さる人達を見つけることが出来ました。
最初に行ったことは、まず集まった仲間を私と同じ熱意にレベルアップさせることでした。創薬の難しいところは、非常にしばしば挫折が訪れるということです。折角見つけた効力の強い新薬候補化合物に、思いもよらない毒性が見つかったり、およそ新薬を発明するまでは考えもしなかったような困難な問題が発生することが非常に多いものです。そんな時こそ、全員の創薬に対する情熱で乗り切らねばなりません。
お陰で、創薬への熱い思いを胸に持った研究者達と、それを支えてくれるマネージメント部門の人達の尽力により、現在に至っております。これが現在のDWTIのメンバーと言えるでしょう。
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研究所は三重大学にあります。もともと三重大学は私が30代後半から約10年間教授を務めていたところで、当時一緒に研究をし、“日高スクール”の思想を持っている面々が現在、教授になっていて理解も深い場所です。そして三重大学が研究活動を通して、民間企業との連携強化を模索されている時、ちょうど、当社も研究所を開設したいと望んでいたことから、産学官連携講座ができました。寄付講座ではないので、産の方も官の中に組み込まれるのではなく独立していて産学官が並列しています。当社が行なう研究活動が保障され、そこで発見したものの権利を得ることができ、大学の講座として教授が手掛けたものは、教授と当社の共有になるという、境界線を明確にしたうえでスタートし、現在に至ります。
三重大学の大学院のマスターやドクター、以前、共同研究をしていた他大学の大学院生など、20代後半から30代の人たちが集まり、当社も徐々に人が増えました。
人数が増えたと言っても合成から生化学まで行なうわけですから、100人、200人いるような製薬会社の研究室と比べると人数は少ないです。ただ、研究所の一人一人が大きな責任を持ち、さらにチームワークで戦っています。研究所というのは、例えば北京オリンピックの陸上男子400mリレーで銅メダルを獲った日本チームのバトンタッチと同じ。メダル候補チームがバトンの受け渡しで次々と失敗する中、日本チームは確実に次の走者へ渡していった、それと同じだと思います。走者がいて、いい製品を早く創ることができるかどうかは、みんなが上手くバトンを渡すことができるかどうか。チームワークを大切にした精鋭部隊です。
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「バイオベンチャーって、何?」と聞かれることがあります。私は一般の方々もバイオベンチャーを知っていると思っていました(笑)。バイオベンチャーというのは、創薬から販売まですべてやっている、いわゆる○○薬品とかのミニ版かと思っておられる方もいらっしゃるんですね。それは間違いで、現在は発明から販売までを細かく区切って、いろんな会社が手掛けるようになりました。川に例えると上流が創薬、すなわち発明、その部分を当社が手掛け、特許を取得します。もちろん、上流部分も大変ですが、特許を取得してからの販売までも大変で、一般に販売されるまでには動物実験や臨床実験など、様々な過程を経て製薬会社の目に留まるように、付加価値を付けなくてはなりません。膨大な人と時間と費用と経験が必要となります。だから「大学発ベンチャーと製薬会社のあいだには死の谷がある」と新聞などに書かれるわけで、発明しても製薬会社まで届けるのはとても難しいのです。では、どう対応すればいいのか――。当社には社名にもなっていますが、「ドラッグ・ウエスタン法」があります。この手法を用いて、その薬がなぜ効くかということの理由づけをして、さらに付加価値を高めていくのです。だから私たちは、死の谷に落ちないで生き残っています。
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将来像は、DWTI発の新薬を複数個創ることです。新薬というのは上市された薬ですが、そこまで手掛けた日本発、DWTI発のグローバルなものを創りたい!!それに尽きます。
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| 用語説明 |
| 日高スクール |
大学の日高研究室のこと、またそこで研究のトレーニングを受けた人 |
| 合成 |
二つ以上の単体または化合物から、化学反応により別の化合物をつくること |
| 生化学 |
生物体の構成物質および生物体内での化学反応を解明して、生命現象を研究する学問。生体物質の構造決定、その作用機能、代謝の機構などが主な研究の対象 |
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